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《通用规范汉字表》(征求意见稿) 所見昨年(2009年)8月、中華人民共和国の新たな漢字規範として、教育部が≪通用規範漢字表≫を発表し、同月12~31日の期間に同表について意見を募集した。中国内の各報道によると、同表作成事業は2001年4月に正式に開始された後、中国内外の学者・専門家延べ3000人余りが議論に参加し、大きな会合だけでも80回余り、原稿は90回余りも改変がなされるなど、8年余りの歳月を費やした末に「徴求意見稿(敲き台)」発表の運びになったそうだ。 奇しくもわが国でも「常用字」改訂の時期にあたり、隣国のことではあるが、漢字を使用する国民として、今回の中国の≪通用規範漢字表≫の主旨や内容および今後及ぼす影響について要点をまとめてみたいと思う。 1 過去の規範の統合 2 三つの通用度レベル 3 繁体字・異体字の問題 4 過去の規範は必要なくなるのか? 5 辞書や教材 1 過去の規範の統合 △同表の「説明」の一にもあるように、同表は≪国家通用語言文字法≫の施行(2001年)と密接に関連している。同法の中でたびたび言及されている「普通話と規範漢字」のうちの「規範漢字」として、すなわち今後の漢字使用の具体的規範として同表は作成された。 「説明」の二にある通り、同表の意義の一つはこれまで分散していた規範を統合して一つにまとめたことにある。従来の規範とは、≪第一批異体字整理表≫(1955)、≪印刷通用漢字字形表≫(1965)、≪簡化字総表≫(1986)、≪現代漢語常用字表≫(1988)、≪現代漢語通用字表≫(1988)である。これらを一つにし、さらに現在の言語事情に合わせて修正補足したのである。 2 三つの通用度レベル △同表は通用度合いによって一級~三級の3段階に表が分かれている。この「級(通用度合い)」を同表では「字級」といっている。それぞれ、一級字表3500字、二級字表3000字、三級字表1800字を収めている。 「説明」によると、一級字表は使用頻度が最も高く、主に「基礎教育と文化普及のレベル」の用字なのだそうだ。また二級字表は、一級に準じる使用頻度で、同2つを併せた6500字が「現代漢語の印刷出版の需要」を満たすのだそうで、従来の≪通用字表≫(7000字)に対応するものと思われる。そうすると一級字が従来の≪常用字表≫(3500字)に対応すると考えてよいのかも知れない。 三級字表の1800字は、「姓氏人名・地名・科学技術術語と小中学校の語文(国語)教材の文語文用字」の中でも一~二級字表に入らないもので、「比較的通用」の字なのだそうで、一般生活と文化普及に密接に関わる「専門領域の用字」需要を満たすという。これは従来の規範には取り込めていなかった範囲だと思われる。三級字表はわが国の「人名漢字表」に対応するといえるかもしれない。ただし科学技術用語や文語文(古典を読むため)の用字が含まれているところは違う。 3 繁体字・異体字の問題 △日本でも似た状況であるが、漢字の簡化によって、主に古典の理解に支障をきたすということが言われてきた。≪第一批異体字整理表≫をみると、かなり性急にしかも乱暴に多くの漢字が廃止されたことは否定できない。新表作成にあたって、使用が停止されていた多くの文字の復活が期待されていたようだ。 新表作成では「原則として繁体字は復活しない。類推簡化も字表内を限定する」が方針になったそうだ。しかし人名や地名あるいは専門用語としてという制限つきながら、多くの異体字・繁体字の使用が認められる。例えば≪簡化字総表≫の「付録」で、「瑷珲县」は「瑷辉县」、「酆都县」は「丰都县」にそれぞれ改正がなされていたが、新表ではこの「珲」と「酆」が復帰した。歴史的に意味のある字が、たとえ常用ではなくても、その存在意義を認められた形となっている。今後は「瑷辉条约」も「瑷珲条约」と公然と表記できるようになる。 日本人に関連するところでは、「大阪」の「阪」が「二級字」として入っている。とはいえ、空港などで大阪行きの便の表示は従来も「大阪」であり、多くの復活字は実際にはずっと使用され続けてきたもので、それを今回公に追認した形のようだ。 ≪通用規範漢字表≫公開徴求意見工作領導小組によると、意見募集期間には、電子メール2688件、書簡157件、ファックス67件の計2912件の意見が寄せられ、新聞・ラジオ・テレビ・インターネットなどを通じても多くの意見や提案があったそうだ。それら意見の中でも、表外字補充の意見が最も多かったという。すでに人名用字として復活した「喆」にしても、その正体字とされてきた「哲」には「折」という形が含まれ、人名には敬遠されがちだったことがその背景にあるようだ。地名・人名には文字に特別な思いが付加されやすいので、杓子定規に漢字を減量することによる人々の不満というのは、予想外に大きいことの現われであるように思う。 4 過去の規範は必要なくなるのか? △ところで、新表が施行されると、従来の各表は必要なくなるのだろうか? まず上記5表のうちの≪常用字表≫と≪通用字表≫の2表は廃止されるのは間違いないだろう。≪通用規範漢字表≫では一~三級に等級分けがなされ、2表に加え、日本の「人名漢字」にあたると思える文字も取り込んでおり、全体で2表を超える「字量」をカバーしているからである。 問題は≪異体字整理表≫、≪印刷通用漢字字形表≫、≪簡化字総表≫の3表である。まず≪異体字整理表≫は、今の≪通用規範漢字表≫の体裁では代替できない。どの異体字がどの「規範漢字」に対応するかの付表がないからである。≪印刷通用漢字字形表≫も同じである。3つ目の≪簡化字総表≫は、今回の≪表≫に付された≪簡繁漢字対照表≫で代替できそうにみえるが、しかし≪簡化字総表≫は3つの表と1つの付録に分かれ、単なる簡繁対照表ではない。簡体字構成の重要な原則が表現されており、廃止するのであれば新表にはそれらの内容を盛り込んでおかなければならない。 5 辞書や教材 △さて、新表が施行されれば主な辞書は改訂されるだろう。我が家の膨大な量の辞書は、今後多くの誤りを含む文献となってしまう。表の説明や注釈を見る限りではそれほど深刻な影響はなさそうであるが、実際どれほどのものになるか… |